筋肉痛
筋肉痛は年齢を問わず誰にでも起こりうる症状ですが、通常は1週間以内に自然と改善することがほとんどです。しかし、それ以上に痛みが続く場合には線維筋痛症やリウマチ性多発筋痛症など筋肉に炎症を引き起こす病気の可能性もありますので注意が必要です。
運動後数時間〜数日後に生じる筋肉の痛みで、運動中〜運動直後に生じる筋肉の痛みは「即発性(急性)筋肉痛」。一定の時間が経過してから症状が生じる「遅発性筋肉痛」の2種類があります。
原因
筋肉痛のメカニズムは、明確には解明されておらず、諸説あります。
以前は、運動した時に生じる乳酸(疲労物質)の蓄積が原因とされていましたが、その矛盾点が指摘され始め、現在では、運動によって傷ついた筋線維を修復しようとする時に起こる痛みという説が有力となっています。
重量挙げや短距離走などのように筋肉に負荷がかかりやすい激しい運動によって筋肉内に乳酸や水素イオンなどが蓄積し、筋肉の一部に血流不足が起こることが原因と考えられています。
不慣れな運動や強度の強すぎる運動を行うことで、筋肉が過度な収縮を繰り返しダメージを受け、炎症を起こすことが原因と考えられています。
メカニズム
運動を行うための骨格筋は数千にも及ぶ筋線維が集合して形成されており、その筋線維の束は筋膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。痛みを感じる神経は筋膜にあり、筋線維自体にはありません。そのため、筋線維の炎症によってプロスタグランジンなどの痛み刺激物質が放出され、筋膜や周辺の結合組織にある神経が痛みを感知しているとされています。
01.普段使わない筋肉を突然使ったり、同じ筋肉を使いすぎたりすることで、筋肉を構成している線 維(=筋線維)や周りの結合組織に微細な傷がつく。
02. 損傷した筋線維を修復するために白血球を中心とした血液成分が集まる。このとき「炎症」が 起き、刺激物質(ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジンなど)が生産され、筋 膜(筋肉を包んでいる膜)を刺激する。それが感覚中枢を介し、痛みとして感じる。
つまり筋肉痛とは、傷ついた筋線維を修復する過程で炎症が起き、生成された刺激物質が筋膜を刺激して起こるものと考えられています。
① 発痛物質が筋膜に届くまでに時間がかかるため
② 日頃あまり使っていない筋肉で、毛細血管が十分に巡らされておらず、損傷筋線維に血液成分が集まるまでに時間がかかり、発痛物質の生産に時間がかかるため(日頃よく筋肉を使っている人は、筋線維の修復が早く、筋肉痛が起こりにくい可能性も…)
ちなみに、「歳をとると筋肉痛が遅く出る」と言われますが、これも定かではありません。同じ運動をした後の筋肉痛の出方に年齢による時間差は認められなかったとする調査報告もみられています。
筋肉痛になりやすい運動様式
運動には大きく分けて、以下の3つの運動様式があります。
(例)重い荷物を下ろす、階段を下りるなど
(例)重い荷物を持ち上げる、階段を上るなど
(例)腕相撲など
このうち、特に筋肉痛が起こる可能性が高いのは、①エキセントリック運動です。3つのうち、筋肉を引き伸ばしながら筋力発揮をする時が1番筋線維への負荷が大きく、損傷が起こりやすくなるためです。
予防法
筋肉痛は、普段使わない筋肉を急激に動かしたときに起こりやすくなります。
使わない筋繊維は少しずつ細くなり、毛細血管が乏しくなります。普段から全身を動かす有酸素運動を取り入れ、筋繊維への血流を良くし、毛細血管のすみずみまで酸素や栄養を届けられるようにしましょう。
また急な運動は筋肉に負荷がかかって、筋肉を損傷しやすくなります。運動前は反動をつけながらからだを伸ばす「動的ストレッチ」やラジオ体操などで柔軟性を高め、運動後は反動をつけずにゆっくりと伸ばす「静的ストレッチ」を行い、筋肉の緊張を緩めるようにしましょう。
対処法
過度の運動で起こった筋肉痛の時には、痛みのある筋肉の安静を保ち、熱感がある時には冷やすことで自然に症状が改善します。
※血行障害が原因と考えられている急性筋肉痛では冷却することで血管が収縮し、かえって症状が悪化することがあるので、患部をホットタオルなどで温めましょう。
そのほかの方法としては、鎮痛用の飲み薬や湿布などを使用する方法もあります。
また、筋肉修復効果のある栄養素を積極的に取り入れた食事をすることも有効な手段です。
栄養素 | 豊富に含む食材 |
---|---|
EPA(エイコサペンタエン酸) | 魚、魚が苦手な人はクルミ油や亜麻仁油、キャノーラ油、大豆油 |
DHA(ドコサヘキサエン酸) | |
γ-リノレン酸(GLA) | |
セレン | マグロ、タラ、七面鳥、卵、ニンニクのほか、オートミールやパンなど |
亜鉛 | ヨーグルト、豆類(レンズ豆、エンドウ豆など)、ミルク、ホウレンソウ、シーフードなど |
ビタミンA | サツマイモ、ニンジン、マンゴー、ホウレンソウ、赤ピーマンなど |
ビタミンB6 | ヒヨコ豆、ジャガイモ(皮付き)、シーフード、アボカドなど |
ビタミンC | 柑橘系の果物やキャベツ、トマト、ブロッコリー、イチゴなど |
ビタミンE | 小麦胚芽やヒマワリ油、ピーナッツ、アーモンド、ホウレンソウ、ブロッコリーなど |
タンパク質 |
筋肉痛が痛すぎる、長すぎる時は…
痛みが非常に強く、局所的に発赤や腫れ、熱感などが生じている場合には肉離れなどほかの外傷の可能性があります。
また、症状が1週間以上続いている場合には、線維筋痛症など筋肉に炎症を生じる病気の可能性も否定できません。このような場合には、CTやMRIなどの画像検査や血液検査、筋生検などを行い病気の鑑別検査が行われることもあります。
そのほかにも、ウイルス感染や、薬剤によって引き起こされる横紋筋融解症、筋性疾患などがあります。これらの病気は運動によって生じる筋肉痛とは異なり、専門的な治療が必要です。
“運動をした覚えがないのに筋肉に痛みを感じる”“なかなか痛みが改善しない”といった場合には一度医療機関を受診しましょう。
メディカルジャパンでの介入例
また、筋肉痛の予防対策としての運動指導やストレッチ指導、ストレッチをメインとした施術メニューもあります。運動前の準備、運動後のダウンケアなど、用途に応じて内容も変更していますので、ご相談ください。
長引く筋肉痛や、痛みの激しい筋肉痛など病院受診が必要と思われる場合には、弊社スタッフより病院への紹介状をお渡しする場合などもあります。病院選びにお悩みの方もお気軽にご相談ください。